2011年7月1日金曜日

弓の箸

今日の新聞折り込みにの伊勢原市体育協会の新聞があり目を通していたら、弓具店や武道具店の広告が出ていた。
 ふと弓、竹刀の折れたものなどが店にないだろうかとおもい、早速住所から地図を調べて尋ねた。

 最初に弓具店を目指した。すぐに見つかった。

 玄関の大きな昔風の扉からお年寄りが座して仕事されている姿が見えた。がらがらとガラス木戸を開けて中に入った。

 ごめんください。あの、弓と全く関係ないのですが私趣味でお箸を作っているんですが、もし折れた弓があればと、この新聞を見てきたんですが、と挨拶した。何も言わずに、待ってください、裏にあるからと、ゆっくりした仕草で仕事場から降りて私が入ってきたガラス戸から出て行かれた。4,5間はあるだろうか、全部がガラス入りの木戸である。カーテンがほとんど下がっていて真ん中付近だけのカーテンが開いていた。

 待っている間に店内と言うほどではないが、周囲の壁に立てかけてある弓を見た。数万円もするものがずらりと立て並んでいた。漆仕上げのものは逆に五分の一、四分の一と安かった。そう言えば蕎麦の捏ね鉢も漆塗り?は1万円台だったが無垢の木捏くったったのは四,五万円していた。弓も全部が竹でできているものが高価であった。
 よく見ると、裏表が竹で間が木で出来ているように見えた。そうか、弓は竹とハゼの木を合わせてあるとネットで見たことを思い出した。きれいな仕上げである。

 すぐに戻って見えた。3m位はあるだろうかと思える長い竹を2本持って、竹の厚みは決まっているからこれ位の厚みしかないねと、長い上がり口に置きながら説明された。自転車で来ていたので、こんな長いものは持って帰れない。何とか短く切らねばと。

 気になっていたハゼの木のことを聞いてみた。淵の方にハゼを使うね。何故使うのか、何故ハゼの木なのかは明確に答えが得られなかった。隅の方に何に使うか分からないが、弓の一部を切った治具があった。その竹の切り口を見ると、上下の竹の間に5mm角ほどの三本の竹が挟んでありその両側がハゼの木であった。


弓の竹は宮崎産

 竹はどこの竹ですか。宮崎の竹で、しなりがあると言うことでここのは良いと云われている。そんなわけで宮崎は弓をつくる店が多く全国のほとんどが宮崎だね。柔らかくても堅すぎても駄目。と、職人さんらしい説明である。竹は切り出すときから布で包むという。傷が付いたら商品価値が無くなるからね。そうなんですか、竹藪から大切に切り出されるんですね。なるほど高価な弓であると思った。
 たしか、伊勢原の凧も宮崎の竹だと聞き居ていましたけど。そうだね、もうその人は亡くなったね。凧もやはり粘りが必要ですね。おとなしそうな主人は口数が少なかった。この店は弓をつくるのではなく弓矢をつくるところである。二代目で80年ほど立つそうである。もう来年で店を閉める。え、勿体ないですね。息子さんはなさらないのですか。いやと言っているしね、仕方なくあきらめた、手を休めることなく力ない応えが返ってきた。

 奥の方には火鉢があった。手元にはガスのバーナーがあった。竹を温め矢だけを強制するためのものである。良いバーナーですね。これは専用ではなく改良したものだよ。どうも焼き鳥用のバーナーのようで5〜6cm巾の長さ30cm位の大きさで表面は網が掛かっていた。網の下はたくさんの穴の開いたパイプが通っているのであろうと構造を想像した。これで炭火のように全体が均一の火力なるようになっている。わたしもガスコンロで曲がりを強制することがあるんですが、ガスでは焦がすんですよね。これ良いですね。七輪を買って炭火でやったんですが、ガス警報器が度々鳴ってもう使えませんね。私も欲しくなった。古めかしい棚の上の方にもう一台同じものが置いてあった。

矢竹の入手先
 矢竹はどこから仕入れられるんですか?昔は大山、日向で仕入れていたけど、ゴルフ場が出来て伊勢原には無くなったね。どことは口にされなかったが確かめることもしなかった。昔は農家の方が手間に伐っていました。隅には一抱えほどの乾燥した矢竹が束になって数束立てかけてあった。竹は何年くらい乾燥するんですか。1年だね。と聞いてちょっと驚いた。矢だけで細いからそれくらいで良いのだろうか。1年でよいと言われるのでそれで良いわけだ。

矢の構造
 修理の矢がたくさん座している横に束にして置いてあった。矢の羽はすり減っている。なぜか四本ずつがまとめられている。四本ずつまとまっているようですが何故ですかと聞いてみた。試合は四本使うから、と。長さはいろいろ違うんですか。矢の長さと重さは人によって違うが、羽の長さは決まっている。そうなんですか。羽は鷲の羽で中国から輸入している。羽を取るために布に巻かれた糸を解きまた四本にまとめられた。糸は布のようにきれいに巻かれている。絹糸で細い。これが重ならないようにするには気が遠くなりますね。針金などを巻くときがあるんですがそれでも大変ですしね。重なると目立つからね。
 糸は市販されているよく見る厚紙に巻いてある糸であった。これはどこで買われるんですか?和服の店だけど最近は置いている店が少なくなったね、店(うち)の方がたくさんあるくらいだね。最初に糸に何か染みこまされているんですか?いいや、巻き終えてからボンドで固めるという。

矢竹の表面は皮が剥かれているようですが、どのようにするんですか?一本一本削り出す。よく見ると節の部分は矢竹で凹凸は少ない竹であるにしても更に節は平らになっているし表面は薄く一皮剥がれていた。どれだけの厚みが剥ぎ取られるのか知りたいところであった。

小さな箱形作業台にはサイズの違った長く使ったナイフが数本あった。見せて頂いて良いですかと手にとって見せてもらった。すばらしい刃が付いていた。失礼ですがご自分で研がれるんですか?そうだね、ナイフが研げねば職人ではない。なかなか自分に合ったナイフには出会わせないね。


 済みませんが、自転車で来ていますので竹を切りたいのですが〜と訪ねた。すぐに立って奥の棚に置かれていた鋸を貸してくださった。金切り鋸のようなU型のものであった。何とよく見ると刃はかしめ固定されていた。早々に切った。刃が薄く竹にすぐに食い込んだ。何とか三つに切った。これ時計のゼンマイで作ってあるようですね。そう、もう刃を研いでくれる職人が居なくなってね。何度も目立てされ使いつくされている。刃は全体が中央部分が凹に凹んでいた。さらに固定は何度かされているようで片方が刃を替えた跡が残っていた。弓の糸は麻と化繊が捩ってあるという。その先は独特の輪が作ってあった。昔は麻だけで作られていたが良い麻が無くなり化繊を入れ込むようになったという。

 お父さん薬飲んだ?奥の方へ立って行かれた。私は箸を作っていまして竹を頂く相談に来ました。箸ですか、箸は友達から沢山お土産にもらっています。蕎麦用の箸とか〜塗り箸などは落ちて掴みにくいしね。箸は自分に合ったものが一番だねと〜。

 すり減った二列数段の小物入れ整理タンスが年輪を見せていた。もう使っていないだろうか柱には握力計のような錆びた秤がぶら下がっていた。

 丁寧にお礼を言って店を出た。次の店を訪ねたが、竹刀を作る店ではなさそうで、60歳くらいのおじさんは休憩中だったので玄関を叩くのは辞め帰宅した。



早々に箸を作る
 竹は全体が箸に使えるほどの厚みはなかったが一部を切り鉈で割った。今までにないような割れで、鉈の刃を少し入れるだけで、パッと気持ちよく割れた。ちょっと鉈の位置が来るってしまい薄く割れそうになった。その分短くなったが何とか使えた。二膳ができた。
箸の先の方は薄皮を剥いた箸にした。黄土色で清潔感のある箸である。

 材質の出所がはっきりしている箸。こんな箸が良いな〜。何処かに書いたが、イチロウ選手の折れたバットで作ってみたい〜。



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